「自分たちの使う電気の製造元が目でみえ、身近にあると住民が日常的に感じることで、地域社会に健全な影響を与えるでしょう」と長谷川教授は期待する。
産業界も風力発電に関心を持ち始めた。
三菱重工、石川島播磨重工業など造船、重機メーカー大手が、いずれも風力発電事業を立ち上げている。
神戸製鋼所グループの神鋼電機は、二○○三年一○月から家庭用小型風車を発売した。
五枚の長方形の短冊型の羽が垂直軸の周囲を回転する方式で、全方向からの風に対応できる。
価格は二○万〜三○万円だ。
しかし、プラスの面ばかりではない。
日本の場合には、送配電網との接続の問題がある。
そして、立地上の制約がある。
風力発電事業には強い風が安定的に吹く恵まれた自然環境が必須条件だ。
風車を自然公園や、農地、森林に設置する場合には、監督官庁の許認可が必要だ。
また、高さが必要なため、場所によっては航空法上の規制もかかる。
陸上では広い面積が必要なため、欧州では海上に風力発電所を作る計画が多数浮上している。
しかし、日本では海岸や海上で風車を設置する場合には、漁業権などの問題に直面する。
規制で身動きがとれず、新規事業に取り組みにくい、日本特有の事情が浮かび上がる。
太陽光発電も増加が著しい。
そして、この分野では日本が世界をリードしている。
二○○二年の世界の太陽電池(太陽光発電システムの基幹部分)の生産量は、前年比四三%増の約五六万キロワット分だった。
一九九三年の世界の生産量は六万キロワットだったため、一○年で一○倍弱と急拡大した。
この中で日本は二五万一○○○キロワットと、世界トップの生産量を誇る。
そのうち、シャープが一二万三○○○キロワット、京セラが六万キロワット、三洋電機が三万五○○○キロワットと世界の三強を占め、三菱電機、鐘淵化学工業(カネヵ)が続く。
各社とも増産の姿勢を示しており、業界推定によると、数年中に日本メーカーの生産能力の合計は年間四五万キロワットに拡大する見込みだ。
日本が世界のトップを走るのは、各企業の努力に加えて、経産省が八○年代から太陽光発電システムを個人が購入する場合に補助金を出し、需要を促してきたためだ。
メーカー側は「九○年代に日本で唯一成功した補助金行政ではないか」と評価する。
現在個人が購入すれば、発電能力一キロワット当たり九万円の補助が抽選の上で国から出る。
過去に登場した家電は、発売開始後に数年で値段が急落するケースが少なくない。
当然だが、「量産効果」が働くためだ。
今後の増産で、太陽光発電システムの値段は下落する可能性が高い。
環境志向が強まる中で、各地の公共建築物では太陽光発電システムが使われることが多い。
加えて、日本以外でも需要は拡大しそうだ。
最近、日本企業に、中国やタイからの注文が増えている。
両国では、送配電網の整備が遅れがちな地方の電化のため、僻地の村に太陽光発電システムとバッテリーを置き、まず暗闇に電灯をつけようとする政策が行われている。
貧しい人の生活を日本製品が変えるという喜ばしい光景が各国で広がるだろう。
しかし、ここでもコスト上の問題がある。
現在の日本の太陽光発電システム一基の平均的な価格は、発電能力三・五キロワットで二○○万,三○○万円。
これは一戸建て用で、面積は二○平方メートル前後(約六坪)だ。
四人家族の場合、一年に約二○万円程度の電力を使う。
システム一基を使えば四人家族で年一○万円程度電気代が安くなるため、国の補助金を使った場合には二○年前後で元が取れる。
「地球のために無理な負担をする」のではなく採算が見込める機械になりつつあるが、まだ値段は高い。
「もう少し安くなれば、爆発的に需要が増えると思います」とカネカの八田幹雄PV事業部長は語る。
個人が太陽光発電システムを購入するのは、多くの場合で新築時点という。
「新築するときは、皆さんギリギリの支出をするので『あと二○○万円」がどうしても出ないのです」という。
システムキッチンが現在、一○○万,一五○万円程度だ。
「その水準まで下がったら、日本の大手住宅メーカーも標準装備として太陽光発電パネルを取りつける新しい動きとして、バイオマス系廃棄物発電が注目されている。
ゴミ問題が深刻化する中で、可燃ゴミを効率的に燃やし、その熱を発電に利用する動きだ。
政府は二○○二年三月に「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定した。
これは生物起源資源の有効利用に国が力を入れるというもの。
ただ、言葉は美しいが、廃材、農業の肥料、畜産業で出るし尿、ゴミなどを有効に利用しようとの構想だ。
バイオマスには「カーボンニュートラル」という発想がある。
燃やしたときに生じるCO2はもともと生物が大気中で吸収したもの。
だから燃やしても、地球環境には大きな害にならないとの考えだ。
循環型社会へ転換しようとの模索が行われる中で、このような発想が注目されている。
しかし、こういう理念よりも、地方ではゴミ処理という現実の問題に直面する。
ゴミは不完全な燃焼時に有毒物質のダイオキシンが出る場合がある。
この排出規制が二○○二年から強化されたため、ゴミの燃焼をまとめて効率的に行うことが、小規模の自治体には急務となっていた。
こうした状況の下で、日本最大のゴミ発電施設が福岡県大牟田市で二○○二年一二月から稼働した。
出力は約二万キロワット。
福岡・熊本両県の二八の市町村か従来は、バイオマス燃焼時に出る塩素系ガスが、炉を腐食させていた。
特殊な金属を使い、炉の設計を工夫することで、ガスに耐えられるように技術的な改善が加えられている。
CO2の排出量も、従来各市町村が単独で行っていた場合よりも、二割弱減少した。
この結果、生み出された電気は一キロワット当たり八円で九州電力に販売している。
他の新エネルギーの発電に比べて明らかに安い。
廃棄物発電での燃料は公的なゴミ収集によって安い値段で集められる。
その安さが発電コストにも利いてくる。
RPS法では電気事業者に発電総量の中での新エネルギーによる発電の「枠」を一・三%程度設けねばならないと義務づけた。
このため、各電力会社はコストの低いゴミ発電に関心を向けているようだ。
各地方自治体もメリットが並ぶ大牟田の事例に注目しており、自治体が共同出資するゴミ発電所の設立を検討している。
二○○三年一二月時点でRDFを使ったゴミ発電所は五カ所だが、今後増えるだろう。
RPS法成立時点で、一部のNGOは電力事業者に「枠」を義務づけることに反対した。
ゴミ発電は一般家庭から出るゴミを利用した発電システムの事。
ゴミを粉砕して乾燥させ、ゴミ固形化燃料にして燃焼させるもの。
県や市町村、電源開発、川崎重工が出資者になって最近脚光を浴びているのが水素エネルギーを使った燃料電池による発電だ。
「水の電気分解」の逆の反応を応用した装置だ。
水の電気分解では、水に電気を流すことで水素と酸素が生まれる。
これとは逆に、水素と大気中の酸素を化学反応させることで電気を生み出す。
発生するのがエネルギーと水だけなので、環境にやさしい。
水素の持つエネルギーがストレートに電気に変わるため、エネルギー転換の効率が高い。
燃料となる水素はさまざまな物質から取り出すことができる。
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